尼崎ゆかりの抽象画家
白髪一雄記念室
白髪一雄記念室 第3回展示「白髪一雄と具体II(中期~後期)」
白髪はその中心的なメンバーとして活躍しました。
今回は、「具体」の活動の中期~後期(1957~72頃)に白髪が制作した作品をご紹介します。
具体美術協会(以下、「具体」)は、芦屋在住の洋画家・吉原治良をリーダーとして1954年に結成された、戦後日本を代表する前衛美術グループのひとつです。若い会員たちは、リーダー吉原の「人のまねをするな」「これまでになかったものを創れ」という指導のもと、既成概念を取り払い、競い合うように新たな表現に挑戦しました。それらは当時、日本国内ではほとんど評価されませんでしたが、今日ではインスタレーションや環境芸術、ライトアート、パフォーマンス・アートの先駆けとして、国際的にも評価を受けています。
「具体」は1972年に吉原の死去にともない解散するまで18年間活動しました。今日、その活動は内容の変化に即して、期間を大きく3期に分けることが定着しています。
初期1954-57年 結成からミシェル・タピエとの出会いまで
中期1957-65年 「具体」から“GUTAI”へ、絵画表現を中心とした活動へ
後期1965-72年 新しい抽象、テクノロジーを取り入れた表現、そして万博へ
今回の展示では、「具体」がフランスの美術批評家ミシェル・タピエとの出会いを通じて絵画中心の前衛グループへと展開してゆく中期から、1960年代に多くの新会員を迎え入れてグループとして新たな展開を図りながら70年の大阪万博をクライマックスとして、リーダー吉原の死によって解散する72年までの後期の活動を、白髪の作品と関連資料をもとに紹介します。
「具体」が絵画中心の前衛グループへと展開してゆく中期、白髪は、タピエが提唱するアンフォルメルの画家として評価を受け、「具体」のみならず、日本を代表する前衛美術家のひとりとして国内外の展覧会に出品します。
しかし、60年代に入ると美術界ではアンフォルメルのような熱い抽象表現に代わって新たに幾何学的抽象表現や当時のテクノロジ―を駆使したライト・アートやキネティック・アートといった新しい作品が台頭し始めます。また、「具体」の中では多くの新しい会員の入会、創立期から中心的に活躍していた会員の脱退などがあり、グループの活動に大きな変化が起こります。これらの変化は白髪にも少なからず影響を与えたに違いありません。白髪は60年代半ばには足以外にヘラを用いて描くなど、素材や描き方を模索しながら新たな作風を展開します。また同時に白髪は仏教に関心を持ち始めます。
そして、「具体」が大阪万博という時代を象徴する一大イベントにグループとして取り組んだ1970年、白髪は万博の活動を終えた後、比叡山延暦寺で修行を行い、71年に得度し、素道(そどう)という法名を得ます。
これを機に、白髪は当時の美術の流れとは一線を画した方向へと進んでゆくことになります。仏教の修行を通じて得た精神的な強さは、72年に「具体」が解散した後も、白髪がアクション・ぺインターとして一貫して歩み続ける支えとなりました。
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