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近松賞選考結果

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第7回「近松賞」選考結果

第7回近松賞 受賞作 『馬留徳三郎の一日』 高山 さなえ

第7回近松賞 審査員奨励賞 受賞作 『かんろ』 齊藤 紗智

第7回「近松賞」は2017(平成29)年8月1日から10月31日の締切までに、62作品の応募がありました。6人の審査員により1次審査で23作品、続く2次審査で最終候補作品として10作品を選出しました。
2018(平成30)年3月15日(木)午後3時から東京にて岩松了氏、平田オリザ氏、松岡和子氏、水落潔氏、渡辺えり氏(50音順)の選考委員5名による選考委員会を行った結果、高山さなえ氏(松本市在住)の「馬留徳三郎の一日」を近松賞に決定、齊藤紗智氏(京都市在住)の「かんろ」を審査員奨励賞としました。
受賞作品は選考委員の選評も掲載した冊子を1,500冊発行し、全国の演劇関係者などに配布します。また、平成32年3月までに上演を予定しています。

第7回「近松賞」受賞者

高山 さなえ?(たかやま さなえ)さん

近松賞 受賞者
高山 さなえ  (たかやま さなえ)さん
〈 長野県松本市在住 〉
近松賞 受賞作
『馬留徳三郎の一日』(うまどめとくさぶろうのいちにち)

『馬留徳三郎の一日』 あらすじ

長野県の山深い田舎の集落。
馬留徳三郎と妻のミネは二人でここに住んでいた。
近所の認知症の年寄りや、介護施設から逃げて来る老人達が
馬留家に集まり、仲良く助け合いながら生活していた。
夏の高校野球が始まった暑い日。
徳三郎の息子、雅文から久しぶりに電話がかかって来た。
仕事でトラブルがあり、部下が間もなく馬留家に訪れると言う。

徳三郎が出かけている中、部下の蔵本の来訪にミネは喜んでいた。
雅文の話が聞けるからだ。
しかし蔵本は、ミネが出掛けた後、近所の老人から、
雅文は死んでもういないと聞かされた。

出かけていた徳三郎と話せた蔵本だったが、雅文は死んでいるのか、
生きているのか、本当のところはよく分からない。
ミネからは、お金を渡す代わりに息子を覚えていて欲しいと懇願された。

若年性アルツハイマーを患っている息子に手を焼いている近所の老人の車に、
蔵本は乗せてもらい、お金と雅文のアルバムを持って馬留家を出た。

数時間後、再び馬留家の電話が鳴る。
ミネは、雅文だと思い話しているが様子がおかしい。
徳三郎が代わるとそれは警察からの電話だった。
蔵本が自首し、自ら命を絶ったとの連絡だった。
徳三郎とミネは二人で蔵本に会いに行く。
まるで、本当の息子に会いに行くかのようにー。

高山 さなえさん受賞の言葉

この度は大賞に選んで頂き本当にありがとうございます。
ここ数年、劇作からは大分離れておりました。
様々な出来事があり、全く書けない時期が、長くありました。
小さくうずくまって、膝を抱えて、途方に暮れながら、
じっと号砲を待っている日々を重ねていました。
今、振り返ると、この劇作から離れていた期間があったからこそ、再び、
真摯に謙虚に、大切なところは傲慢に、書く事に普通に戻れたのだと思います。
結局は、劇作だけは諦めがつかなかったのだとも思います。

短い戯曲を少しづつ書き始めた中で、『馬留徳三郎の一日』が書き上がりました。
松本の田舎の方言で積み上げた世界は、私の最大限の優しさが詰まったものです。
そして、一つ一つの言葉を紡ぎ、糸をよる様に台詞を綴り、布を織り上げるかの劇作と
いう作業が、やはり私は大好きなんだと思わせてくれる戯曲になりました。
それだけでも、大きな喜びであり大きな一歩であるにも関わらず、近松賞を頂けた事には感謝しかありません。
本当にありがとうございます。
受賞を伝えた友人からは、こんな言葉をもらいました。
「遠回りも最短距離に等しい。」

劇作家としての努力を積む覚悟と、受賞を励みに、これから精進して参ります。
改めまして、感謝申し上げます。



高山 さなえ?(たかやま さなえ)さん

近松賞 審査員奨励賞 受賞者
齊藤 紗智  (さいとう さち)さん
〈 京都府京都市在住 〉
近松賞 審査員奨励賞 受賞作
『かんろ』

『かんろ』 あらすじ

海洋のちかくにある実家に出戻ってきた姉と、同じく出戻って来た弟。
姉弟は稼業である寒露製作所で働いている。
寒露製作所では主に父が、来る日も来る日も寒露を抽出している。
弟は、それに立ち会っている。
姉は毎日毎日、電話をとって、外部からの問い合わせに応じる。
一家には、ある日突然、「巡礼へ」と残し出て行った母がいて、
時折あちらこちらより、お札や朱印や、くず紙や買い物メモや、
切符やレシートのうらにかかれた覚書などが郵便で届く。
父はそれも燃料に加え、寒露を抽出し続ける。
寒露は、人の生活の動力として、使われる。
寒露には、「寒露がつくと、体の体温の低い場所が、くずれていく」と
いう謂われがある。
寒露がないと、生活できないというわけではない。
(が、あるにこしたことはない。)
寒露のことは、ぼんやりとしか、わからない。

齊藤 紗智さん受賞の言葉

この度は、審査員奨励賞をいただき、ありがとうございます。
賞をいただけたことはもちろん、「自分が面白い、ドラマがある、と感じていることに、少しでも共感していただいた」ことが、何よりうれしく、励みになりました。

私はずっと、言葉に興味がありました。言語そのものというよりは、言葉を発する体、無言の体、それに伴う情動に興味があります。だからこそ、舞台、演劇というメディアを選びました。
作品上で思い描いている構想の前に、言葉を精製し組み合わせ、 すりガラスを作って行くような作業をずっとしてきました。その見え方を、何度も何度も、確認し、眺めていました。

また、長いこと関西に住んでおりますが、出身が関東ということもあり、あちこちの地域の風習や方言が大変参考になりました。その地域のローカルなルールや信心、人々のしゃべり言葉がとても好きです。
そして、あの東日本を襲った耐えがたい出来事も、気持ちのどこかにペタリと貼りついています。

最後になりましたが、急遽このような賞を与えていただいた審査員の先生方、運営の皆さま、これまで私の戯曲を読んでご助言、ご指導いただいた たくさんの方々、私に舞台を教えてくれたすべてに感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

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